サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ

2008年6月16日 14:35

2008-18 サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ (ベアスタ)

第1クールの好調さとは裏腹に第2クールに入って苦戦が続いている両チーム。連敗を先に脱出するのはどちらのチームかという昇格を狙っているチームとしては多少さみしい精神状態での戦いだったのですが、第1クールに打ってきたような奇策をとらずに正面からぶつかった鳥栖が、チーム状態の回復しきれない湘南を完封で下しました。課題点は残るゲームであったのですが、勝ち点3という大きな薬と自信を得た事は今後の試合に大きく作用するのではないでしょうか。

鳥栖は怪我のために高地と義希が試合に出られず、さらにはレオナルドが前半早々からピッチから去ってしまうという緊急事態。しかしながらこのハプニングを十分に補ってあまりあるプレーを鐵戸と廣瀬、そして交代出場の山城が見せてくれました。

鐵戸の一番の魅力はキックの精度が高いこと。クロスやシュートを思う所に蹴る事ができない選手が多いサガン鳥栖の中で、意外性はなくとも目の前のプレーを着実にこなせるという点では、いまの鳥栖に一番必要なプレーヤーだったのかもしれません。前半には中央から左足で強烈なミドルシュートを放ったり、後半のカウンターでは中央の谷口へ丁寧なクロスをあげたりといいプレイを見せていました。パスミスが少ないというのは、もちろん相手にボールを渡さないということでカウンターのリスクも減りますし、全体の押上が徐々に効いてきますから波状攻撃にも繋がります。サッカーをする上で当たり前の事ですが、味方に正確なボールを渡すという重要な役割を着実にこなしていました。PKを獲得した飛び出しも見事でしたね。

廣瀬は久しぶりの出場で、前線とのコンビネーションにやや不安がありましたが、攻撃が魅力である選手という部分をそのまま発揮してくれていましたね。サイドでボールを受けてディフェンスとのマッチアップになった際には、必ずと言っていいくらい目の前の相手に勝ってクロスを上げておりました。ゴールに繋がったわけではないのですが、サイドでの相手との力関係を優位に進めるために必要なプレイであったと思います。このプレイがあったからこそ加藤の自由さをなくさせましたし、鈴木がオーバーラップで前線まで飛び出せる回数を減らす事ができました。ポゼションを前の方に取るという役割は十分果たしてくれました。

山城は前回の湘南戦で悔しい思いをしたので今回の勝利は爽快であったと思います。今回は彼はマンマークではなかったので攻撃の時に自由に力を発揮することができていましたね。彼も広瀬と同じく個人で勝負できるタイプでありますので、一人でボールを持った時に攻撃にスピードを加えることができていました。積極的なシュートやしかけもありましたし、守備においてもさぼることなくボールを追い回していました。レオナルドの穴を十分に埋めていましたね。

前線の二人は、連勝中でも連敗中でもこれまでと変わらないハードワークを見せてくれたと思います。特にキムは体にキレがでてきてドリブルでのしかけが非常に楽しみになってきました。あとは中央にいる選手がしっかりと決めてくれればキムが更に気持ちよくプレーができて、またそうすることによって彼のゴールも見られるのではないかと思います。キムのサイドの突破と中央への折り返しは見事に攻撃の核となっております。また、藤田の運動量も圧巻でしたね。

谷田は彼の持ち味が試合を増すごとに発揮できていますよね。サイドからのロングボールが正確であり、ドリブルでの仕掛けや度重なるオーバーラップなど、段々とチーム戦術に慣れてきたと思います。最初は山城と合わない場面が多かったのですが、途中からいいタイミングでの動きが多くなってきましたね。

キムと交代して入った谷口はせっかくのチャンスをはずしてしまって少しもったいなかったですね。あの鐵戸のクロスをしっかりと決めていれば試合を決める事ができていただけに本人も悔しかったでしょう。筆者としては、谷口のようなプレーヤーはチームが守りの時間に入ったときのカウンターでは一人で攻撃できるタイプではないので、あの位置にドリブルからシュートまで打てる石田を持ってくるのも手でなかったのかなという思いはあります。一人で前線でボールを受けても味方の上がりを待つだけで機会を失ってしまう事もありましたしね。ただ、相手のパワープレイやセットプレイで対抗する高さも必要ですし、何よりも、彼自身の成長のために、この大事な試合でのクローザーとしての出場は非常によかったと思います。

この日の鳥栖の守備陣は見違える程にアグレッシブでありまして、よく前線からボールを追っていたと思います。連敗中には見られない、相手のディフェンダーがロングボールを供給しようとしていたときのつっかけがよく効いていました。湘南は左サイドの鈴木からの長いボールの配給も一つのパターンとなっているのですが、そこに対してキムであったり、藤田であったり、時には衛藤がつっこんで来たりとボールを前線に出させないプレーがよく目立ちました。シュートブロックに関しては言わずもがなですよね。全体で集中していたと思います。

鳥栖はアジエルが攻撃の起点ということで、中盤や前線からの早いチェックとパスの供給元をつぶす事がこの試合のポイントでありました。前半や後半の途中までは全体がコンパクトに保たれていて、守備のポイントを前に置くプレスが効いていました。しかしながら、プレスに行くことはディフェンスラインの人数が足りなくなるというひとつのリスクにもつながるのであり、実際、加藤や石原、原などが小気味よいパスワークでプレスを交わして来たときには決定的なピンチになりかけていました。

鳥栖がこの試合でよかったのはこのようなプレイの後であっても、恐れずに終始ディフェンスラインと中盤をコンパクトに保ちつつ、互いに役割を明確に分ける事が出来ていた点だと思いました。これまでの悪い状態だと、徐々に中盤が下がって来ており、ボランチのみがボールサイドに奔走するというシーンを見かけておりましたが、この試合はチーム全体として前からの守備を徹底していましたね。

鳥栖がこのように前からの守備ができていたのは、湘南の攻撃陣の不調にも助けられました。特に、(永田-坂本)-(加藤-アジエル)-(原-石原)という3つのラインがそれぞれで分断しており、彼らの距離感が遠いのでいつもだったら通るパスが通らない、いつもだったら繋がるパスが繋がらないということで攻撃が完全にマヒしておりました。ボールを奪われてしまうと鳥栖の攻撃にさらされるのでボランチとサイドバック(特に臼井)がどうしても守備よりのポジションをとらされてしまいます。そうなると、ますます前線の孤立が顕著になっておりまして、湘南らしい連続した攻撃に発展できていませんでした。このように、思いのほかボールがつながらない状態であったので、後ろからのロングボールが多い展開という、いつもの湘南らしくない攻撃に終始していました。

後半に入ると、交代で入った阿倍が前線にいながらもゲームを作る役割を担いまして、石原をひとりトップに残して自らが下がってボールを受ける事によってアジエルや加藤とのつなぎ役として、また、時には裏へぬけ出す動きによってディフェンスラインをひっぱるという役割を果たす事によって、鳥栖の間延びを生みだして湘南の中盤の活性化を生んでおりました。湘南は最終的なシュートの形としては遠い位置からのクロスからのヘディングではなく、スルーパスやワンツーでゴール前のチャンスを作る形ですのでゴール前で選手が待ち構える状態は得意ではありません。ですので、阿倍のように下がってくる動きでバイタルを埋める選手が入った事が、アジエルの飛び出し、ドリブルや加藤のチャンスメイクもつながり、また、ボールがつながりだしたので臼井や坂本の攻撃参加を引き出してだしていました。

ただ、いい形で攻撃を進めていたのですが、リンコンが入る事によってまた中盤が停滞するようになってしまいました。リンコンはテクニックがあってボールを持てるのですが、それは前線でボールを受けた時に威力を発揮するのでありまして、中盤でボールを受けても攻撃のスピードアップにはつながっていませんでした。阿倍が前後して作っていたスペースも、リンコンでは飛び出すことができませんし、何よりも阿倍の行動範囲自体がリンコンが中盤に入る事によって狭くなってしまった印象があります。

しかしながら、リンコンとアジエルが中央に入ったことによって鳥栖のディフェンスも徐々に中央に寄りすぎる状態になってきており、最後はサイドのスペースを大きく空けてたくさんのクロスに晒される状態となりました。リンコンが中盤に入るのはノックアウトのパンチではなく、ジャブのように効いてきたのですが、投入時期が残り30分というのが幸いでしたね。筆者としてはむしろ前線に入れられた方がアジエルと縦の関係ができて怖かったのじゃないかなと思いました。これだったらノックアウトパンチにつながったような気がします。

最終的には追加点が取りたい鳥栖と、同点に追いつきたい湘南ということで、最後は疲れもあって多少間延びした展開になってしまいましたが、なんとか鳥栖が守り切って久しぶりの勝ち点3を上げる事ができました。

鳥栖としては、課題としては、試合の中でのテンポアップとスローダウンのバランスでしょうか。焦らなくてもいい所で焦って蹴ってしまったり、早い攻撃で仕掛けたいところなのに味方の上がりが遅くスローダウンしてしまった場面など、試合の勘どころというのがまだまだつかめていない気がします。相手のプレスに負けてしまって蹴らなくてもいいためには足元の技術が必要ですし、しっかりと中盤ボールポゼションするため、そして早い仕掛けからの正確なパスとシュートのためにはキック精度が必要です。やはり、サッカーの基本であるキックの練習がまだまだ足りていないという事なんでしょうね。

また、比較的自由なプレイと飛び出しが身上である高地と義希がいなかった事が各々のエリアを責任を持って守れたということにも繋がったと思います。今回の試合は鳥栖として非常にいい形であったと思いますし、この勝利でチーム全体としての戦い方を今一度見直してもいいのではと思います。もちろん、義希と高地が不必要と言っているのではなく、彼らのプレーは鳥栖の攻撃起点でもあり、またシュートも打てる最終地点でもありますので、彼らを生かすも殺すも回り次第だという事ですね。

次節はアウェー熊本との対戦です。相手は最下位でありますが九州対決ということで前回のような粘り強いサッカーをしてくるでしょう。強敵湘南を下したことが無にならないためにも必ず熊本から勝ち点3を持って帰ってきてほしい所ですよね。


 

コメント

とても勉強になりました。選手それぞれのプレーや特徴を良く知ることが出来ました。鐵戸選手のいいところも。でも若いチームなので、かみ合うといいけど、のらなかったとき誰か必要だなと感じますね。もっと楽に試合を運んでほしいです。1点差は、はらはらします。またお邪魔します。

こんばんは!勉強だなんて恐れ多いお言葉ありがとうございます。サガンドリームスが経営を引き継ぐまでに発行されていた海賊版は非常に楽しみでしたし、鳥栖スタジアムへでかける際にこの試合では発行されるのかなーっていつも思っていました。

いまのサガン鳥栖は若いチームだからこそ、乗ったときは勢いがありますよね!でも、おっしゃるように悪い状態のとき、乗らなかった時にどれくらい粘れるかというのがホントのチームの強さだと思います。最後はかなりしびれる状態でしたが、こういう経験を重ねていくことが大事なんでしょうね。そうしたらもっと楽に勝ってくれるんだと思います^^

コメントする

このページのTOPへ▲