2008-05 アビスパ福岡 VS FC岐阜
昨シーズン終了後、資金難でJリーグ参入が危ぶまれたようなチーム状況でありながらも的確に補強を行った結果、開幕してからは着実に勝ち点を積み上げているFC岐阜と、昇格という目的のために理想とするサッカー像を捨ててまで結果を求めてシーズンインしたものの、なかなか波に乗れないアビスパ福岡。両チームの対戦は意外な結果で幕を閉じました。
序盤はアビスパ福岡が持ち前の技術力を発揮してボールを支配しますが、試合全体の流れとしては実にスローペースでした。その根底にあるところは、岐阜が守備重視でありカウンターを狙いながらも一発のロングボールに終始することなく、ボールを失わない事に重きを置いた攻撃であったことが考えられます。支配していた福岡も、岐阜のスローペースにはまってしまってシュートチャンスを作り出す事はありませんでした。
岐阜の守備は非常にシンプルでありながらも徹底されていて、センターフォワードに対するマーキングと、ハーフに対するマーキング、そしてボールを供給するボランチに対するマーキング。これらを局面で相手の動きに合わせながら実に粘り強く受け渡しをしておりました。目立たないながらも、ボランチの菅と北村がダイアゴナルランで入ってくる中村と久永を自由にさせないようにしっかりとついて行っておりました。
ところが、そのマーキングにほころびができた時がまさに失点の場面でありまして、岐阜の守備組織としては北村が久永のマークを受け渡した瞬間に中村北斗を見なければならないのにも関わらずフリーマンとしてバイタルエリア浮いておりました。右サイドへ展開する前のフォワードのポストプレイのシーンは福岡のフォワード二人が左サイドに固まっていたので、センターバックはマーキングのためにそのサイドを固めます。そこで中盤の久永、中村が右サイドへ流れ、第三者の動きとして山形が上がってきました。この段階で右サイドのスペースにおいて数的優位を作る状況ができあがっております。それは、フォワードの選手が意図的か意図的ではないかはわかりませんが、センターバックの注意を左サイド引きつけるという使命を果たした上の結果です。
その右サイドへ流れ込む久永と山形の動きに岐阜のマーキングが一人ずつ遅れていきました。山形にも久永にもマークをつけようという意図は見られました。しかしながら、ダイレクトパスの連携でそのマークの受け渡しは不完全に終わりました。あえて言うならば久永を渡した後に中村を見逃した北村、もしくは中村が入ってくる所のスペース(シュートコース)を抑えに行くのが遅れた小峯の責任が少しだけ大きいと言ったところでしょうか。
このように、福岡の選手たちも個々の能力が高いのでそれぞれの思惑が一致した際の崩しというのは、非常に華麗で大胆な攻撃が実現します。タレイというパスにおけるアクセントを加える事ができる選手の加入も大きいです。しかしながら、それらはチームとして機能しているかというとまた別問題であることはこの試合、そして徳島戦の結果...いや、昨年からの指揮官の振る舞いを見ると言わずもがなという形でしょうか。
岐阜はこのような形で先制されたにも関わらず、攻め急ぐ事をよしとしませんでした。1点取られて前半から焦る事に何の効果も生まれないということを彼らは知っていたし、またその事をチーム全体として理解していたからだと思われます。これまでと同様にマークを外さず、ボール、人、それぞれの動きを見極めて時には全体がリトリートしてでも守り切る。そのような意図が伺えた前半でした。
後半になると状況が変わってきます。それまで機を見ての攻撃参加であったボランチと両サイドバックが積極的にボールサイドに絡むようになってきました。全体的な位置が高くなるので自然とボールを奪う位置も高くなります。そのスペースをついて福岡が追加点を上げていればこのような結果にはならなかったかもしれません。ただ、全体の位置を高くして攻防を挑んできた岐阜を受け流すチーム力、守備の時間帯という意識を持って全体的にリトリートするという展開の駆け引き力を福岡は持ち合わせていませんでした。
岐阜と福岡の違いをあげるとすれば、福岡は守備の時に(特にボールを持っている)サイドの選手について行ってしまうと、中央でフリーになっている選手のマークがおろそかになること。バイタルエリアで前を向いてボールを受けられる機会をあまりに多く作っておりました。片桐にボールが入る前、高木にボールが入る前、得点に至らなかったシーンでもボランチの選手や梅田が中央でフリーでボールを受けております。ラストパスの前の前の状態が前を向いてボールを一番良いところに捌ける状態にあるのです。パスコースを限定されて、しかたなくサイドに開いた(福岡からすれば追い込んだ)という形ではありません。
徳島戦の後に福岡の指揮官が問題は中盤の守備にあるという事を挙げておりました。筆者としてはこの指摘はまさにもっともな所だと考えます。というのも、福岡の最終ラインは山形、布部、長野、中島でありまして、お世辞にも守備に特化した人間が後ろで構えているとは思えません。どちらかというとサイドバックの攻撃参加がありきとなっている体系でありますし、筆者はこれまでも山形の守備力の不足(長野との連携の悪さ)を指摘しております。
だからこそ、中盤で如何にパスコースを制限することができるか、中盤で如何にボールを奪う事ができるかという中盤の守備力が大きく関わってきます。ところが、福岡はそのような状態であるにも関わらず、中盤にも攻撃的な選手を置いており、特にタレイは筆者が見るところでは決して守備力があるとは思えないボランチであり、久藤がカバーリングしているプレイでは補いきれない部分であると思います。
岐阜の4点目は顕著でありまして、岐阜から見た左サイドでボールを持つ選手に対して山形とタレイの二人がマークに行くものの、ボールを奪おうとするアクションを連携して行えずにやすやすとクロスを挙げられております。守備側が二人、特にサイドで動く範囲が限られている場面であったら、どちらかが奪い取るがごとくプレス(アタック)に行き、交わすところを狙って後ろで待ち構えている選手がボールを奪うという形を作らなければなりません。ところが、二人でまさにアリバイディフェンスがごとくずるずると引いて結果、梅田のヘディングゴールにつながりました。中央の吉田と中島の動きにも問題はあるでしょうが、数的有利な部分でクロスがあがるところを未然に防ぐ事ができれば何の問題にもなりませんでした。
また、高木の3点目のシーンですが、久藤が高木に抜かれてしまってゴールを奪われるのですが、岐阜はさらに左サイドにフリーの選手が構えているのです。久藤は左に展開された時を頭に入れながら目の前の対人守備をこなさなければならないという非常に不利な状況でありました。それぞれの失点シーンを見ても分かるように、基本的にペナルティエリア内やゴールライン近くにいる守備側の人間が少ないです。単純な理論ですが、守備側の人数が少ないとボールがこぼれた時にクリアができる可能性が減り、相手の目の前にボールがこぼれる可能性が高まります。
福岡のサイドバックは様々な役割を与えられておりまして、攻撃時にはサイドに開いてウインガーの動きを、守備の際には中央へしぼってストッパーの動きが求められていますが、守備に入ってしまうとこのように不安を露呈してしまいますね。対人守備に対する弱さ、クリアする場面でもミスというのがあまりにも顕著になってしまいました。
福岡のメンバーで守備専門と言われる人間は長野だけでしたね。久藤も元はトップ下や攻撃的サイドハーフの選手ですし、久永、タレイは言わずもがな、布部に至ってはフォワードもさせられている選手ですし、中村北斗もボランチや右サイドバックで起用されているものの、魅力は攻撃的な部分ですし。(高校時代はすっぽんマークと言われていましたが)でも、そう考えると長野もいまの指揮官ではフォワードとして起用されていましたね(笑)
筆者は、むしろ、中盤より上の選手たちが個人技に優れている選手が多いが故に、逆にロアッソ熊本のように矢野、河端、上村、福王とセンターバックが4人並ぶような体系であっても福岡の攻撃は機能するのではないかと思うわけです。少なくとも、指揮官が攻撃が好きなのであれば、センターバック二人は対人に強い強力なストッパータイプを置くことが必須だと思われます。宮本、柳楽、長野、中村、この4バックでタレイと久藤or布部or城後をボランチに置き、ハーフは田中、久永、中払、久藤の中で調子がいい選手を起用していく。そうすれば少しは守備の問題も解消されるのではないかと思います。宮本も中村も程よくオーバーラップできる選手ですしね。
また、筆者的には田中は常にスタメンで起用した方がいいと思いますけどね。失点を喫してから田中を入れたのですが、黒部、大久保、グリフィスと前線にたくさんの選手が入り混じりますので田中が生きるスペースが完全につぶれておりました。足元でつないだり、前線にロングボールを放る攻撃では田中の良さはまったく生きませんし。
福岡は指揮官も含め、チーム全体として失点の結果を精神論のみならずチーム全体のバランスを見るべきではないのかなと思うのですけどね。
さて、話は長くなりましたが簡単に岐阜の話題を。片山は上背もあってボールもキープできるし、カウンター攻撃においてトップにはってもらうには適した人材ですね。その周りを個人技がある片桐と高木がいい形でフォローできていると思います。特に、片桐は開幕の甲府戦でアシストを見せたように溜めてパスを出せる選手ですので高木や梅田などの中盤の選手もスペースに飛び込みやすいですね。
ボランチの二人は目立たないながらも与えられた役割をこなすがごとくハードワークしておりました。後半からはどちらかが1列前に前進して(福岡のマークが甘いためにフリーで前を向いたからかもしれませんが)左右にボールを散らす仕事も担っておりました。
センターバックの川島と小峯は...実は不安な点も多く(笑)
でもこの不安な点は、ボールを持った際の足元の弱さですから、マンマークや対人といった守備的要素がおろそかになっていたわけではありません。最終局面では体も張っていたし、振り切られることなく粘りの守備を見せておりましたね。
守備ではそつなくこなしていたものの、攻撃面でちょっとだけ不満だったのがサイドバックの吉村と那須。吉村は相変わらずクロスの精度がなかったですね。彼がオーバーラップしてもっと効果的なクロスを挙げる事ができれば得点につながっていただろうに、いいタイミングで飛び出しているだけにもったいないなと感じました。那須はちょっとボールを持ちすぎ。コースを探しているのかもしれませんが、味方全体の流れとは違うエリアに持っていきますのでもっとシンプルにさばけばと思いました。彼がサイドでキープする事が岐阜の攻撃に生かされていませんでしたよね。やはり、岐阜のサッカーとしては空いている前線の選手に対してシンプルにボールを供給することが求められると思います。1点目の片桐へのパスはまさにゴールに直結するシンプルでいいプレイでした。