アビスパ福岡 VS サガン鳥栖(博多の森球技場)
2007 - 70 アビスパ福岡 VS サガン鳥栖
1年間の長い戦いの幕が下りるホイッスルが鳴り響き渡りました。思わぬ敗戦だったのかそれとも覚悟しつつあった中での敗戦だったのか、メインスタンドから見渡して静まり返る左側と湧き上がる右側の好対照っぷりがその後に行われた両チームのシーズン報告会にも如実に現れました。
試合ですが、開始早々、鳥栖がショートパスをつないで右サイドからのクロスにジョズエがシュートを放つ上々の立ち上がり。対する福岡も長野を前線にあげて林とともにポイントを前につくろうと攻撃的な姿勢で試合に臨みます。
しかしながら、この試合で出足の一歩が鋭かったのは断然鳥栖の方でした。福岡のディフェンスラインや中盤にプレスをかけて相手のパスミスを誘発するプレイが多数見られていましたし、先制点のきっかけとなる衛藤の突破もその前で猛然とプレスをしかけてボールを奪った結果でした。
その後、試合が荒れ模様になります。アレックスの退場のシーンはアレックス自体のひじ打ちが悪かったのは当然なのですがそのプレイを誘発する流れというものがあったことも確かです。衛藤がセンターサークル付近で倒れている際に、ボールを外に出す事をせずにプレーを続けたアビスパ福岡。このプレイを続けることは決して間違っていないと思います。ダービーで負けている状態ですし、プレーをやめなければならない規則はない。むしろ、今年はボールをわざと外に出す事を自重するような話もあったはずです。このとき、一瞬選手たちも含めてスタジアムが静まり返ったのですが、アビスパがプレーを続けようとしたときにスタジアム全体からざわつきがあがりました。さて、このときに審判が止めることはできなかったものかと。不満はあがるかもしれませんが、決してスムーズに試合が流れていったわけではないので止めるチャンスはあったはずです。もちろん、プレーが続行されたのであれば、鳥栖としては衛藤のためにもプレーを切りたいのでボールを受けたアレックスに対して義希がファールも辞さずの覚悟で止めに行きました。ところががっつりときた義希のプレーに対しても審判は笛を吹かない。これに対してアレックスがドリブルしながら肘をいれてしまいました。一発レッドでした。もちろん肘を入れたアレックスが退場になるのは当然の事なのでしょうが、この事象を作ったのはアレックスだけの責任ではないような気がします。
こういった流れを生んでしまったので、福岡の選手たちはダービーに対する気持ちがボールへ向かっていませんでした。せっかくの試合に対する気合いがいらいらとしながら空回りしてしまう悪循環。ついには久永も二枚目のイエローカードで退場となってしまいます。この2枚のイエローカードのうちどちらかは厳重注意として済ませる事はできなかったものか。試合が壊れてしまった瞬間でしたね。
相手チームが二人退場してしまうという思わぬ数的優位な状況が作られた鳥栖でしたが、その後の試合運びは決してスムーズではありませんでした。相手が二人いないということは、マンツーマンのマークがあったとしても必ず二人は空いている選手が生まれます。それにも関わらず難しいパスを選択したり、無理なドリブル突破を図ったりと思うようにシュートへ結びつけることができません。こういう時はシンプルな攻撃でいいんですよね。ゆっくりでもいいのでパスを回してほころびを探す。数的優位な状況であり、しかも決して福岡はディフェンスラインと中盤をどん引きさせていたわけではありませんから、ショートパスをつないでいくと必ず前に道が開けます。それにも関わらず長いボールを蹴ってみすみすボールを失うなどもったいない攻撃に終始していました。
もうひとつ感じた事はどこか選手たちに遠慮している部分がなかったか。たとえ弱っている相手であっても、普段と変わらずに全力をもってつぶしにかかって欲しかったと思います。いや、確かに選手たちは全力で戦っていたかもしれませんが、どこか心の奥底にある余裕の気持ちが、ゴール前でフリーでありながらのトラップミス、イージーなパスミス、肝心なエリアでのクリアミスにつながっているような気がしました。集中していないとは言いませんが、こんな状況でいいのだろうかと相手に対して遠慮しながらプレーしているといった部分が見え隠れしました。鳥栖サポーターも圧倒的優位な状況においてもなかなか追加点が奪えない状況どころか福岡に簡単にボールを奪われるシーンにやきもきしていたのではないでしょうか。
前半の終了間際に惜しくもバーに当たるという高地のシュートがありましたが、あれは決してスルーパスやドリブル突破によって作ったチャンスではありません。無理をせずに回しながら、回しながら、ほころびを見つけた瞬間に高地がフリーだったというプレーです。いつもの鳥栖の動きをしていればあのようなチャンスはもっと生まれていたと思います。
福岡は退場者が二人もでるという苦しい形であったので前線に対してボールを預ける攻撃しかできませんでした。林が強さを見せてボールをキープするものの、相手が二人も三人も寄ってくるので結局はボールを失ってしまう。田中もスペースに飛び出してボールを受けるもののフォローする選手がいないのでコースを限定されて取られてしまう。人数がいないというハンデを背負った中で非常に苦しい戦いでした。ディフェンスラインも最後まで頑張っていました。特に宮本はサイドの裏を取られても懸命に足をだして最後の最後まで必死にピンチをブロックしていました。川島も機を見てはオーバーラップもしかけていましたし、一時は1点差となるヘディングを決めました。ところが、このチームに同点、ないしは逆転まで試合を盛り返す力は残っていませんでした。
今シーズンの鳥栖を象徴するシーンは最後の最後にやってきました。コーナーキックのチャンスを得て吉田が胸トラップからのボレーによる得点。そして吉田に向かって集まってくるチームメイト。サガン鳥栖の白いアウェーユニフォームが吉田を中心に福岡のペナルティーアーク付近で一丸となって集まりました。チームとしてのまとまり、チームとしての一体感。今シーズン限りでの退団が決まっている吉田に群がる選手たちのシーンを見て涙を浮かべた鳥栖サポーターは数え上げたらきりがないでしょう。
対照的に福岡は試合前に解雇を通知された選手たちがモチベーションを上げることができないという理由で試合出場を拒んだという話をリトバルスキーが試合後に行いました。彼はその選手たちにプロとは何かということを問いかけてしましたが、では監督の仕事とは何でしょうか。このBlogでも散々主張しているのですが、監督の大事な仕事の一つである選手の試合に対するモチベーションや気迫を上げていくことをリトバルスキーは"プロの監督"としてできていたのでしょうか。試合が始まったら監督はボールに触れる事はできません。だからこそ選手たちが常にベストのプレーができるような環境を作ってあげなければなりません。もちろん、それには戦術や選手交代も含まれますが、それと同様に大事なメンタルコントロールができなかったのは監督の責任でもあると思います。
筆者は、鳥栖の吉田と山口が最後の最後まで彼ららしいプレイを見せてくれた事とともに、このようなチームを作り上げた岸野監督以下首脳陣の皆様に深く感謝したいと思います。
試合後のセレモニーで社長と監督は淡々とコメントを語り、山形は無念混じりの涙声で話を行いました。そしてその時に社長の挨拶、監督の挨拶の時にはブーイングがあがり、山形の挨拶の時にはサポーターから労いの拍手がわき上がりました。これがサポーターたちの気持ちなのです。ブーイングをされる人間はチームに残り、拍手を受ける人間はチームを去る。サポーターの気持ちを大事にしないチームに果たして未来はあるのでしょうか。
鳥栖を退団する吉田、山口、小井手ともに無念の形で去っていく福岡の選手たちが来年の開幕の時に笑ってサッカーをづづけられていくことを願っております。
そして、いわゆる鳥栖の暗黒時代を知っている最後のサガン戦士、いや、あの暗黒の年であるにも関わらずシーズン途中から移籍してきてくれて素晴らしいプレーでチームを盛り立てた今シーズン限りで引退する村主にも深く感謝したいと思います。4年間、ありがとうございました。お疲れ様でした。

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